激安の送迎付き温泉ホテルとして、一躍有名になった「おおるりグループ」をご存じでしょうか。残念ながらコロナ禍による自粛の影響を真正面から受けて、2021年までに多くのホテルが閉館しました。
2023年に、当時の閉館状況やその後どうなったのか、まとめて紹介しました。それから1年経って、いくつもの動きがありましたので、改めて2024年の最新情報を紹介します。
買い手がつかなかった、かつてのおおるりホテルは今どうなっているのでしょうか。
順番に解説していきます。
日光 鬼怒川温泉
ホテルニューおおるり
まずは本社機能がある、鬼怒川温泉のホテルニューおおるりです。こちらは2021年に一度閉館しましたが、翌年2022年に再開しています。
全館営業ではないようですが、鬼怒川温泉で残っている唯一のおおるりですので、ぜひ頑張ってもらいたいところです。
旅荘おおるり荘
続いては、鬼怒川温泉のもっとも北のエリアにあった、旅荘おおるり荘です。こちらも、2021年に閉館してしばらくは放置されている状況でしたが、2023年の終わりから、Tabistというブランドで、清水の宿として復活しています。
このTabistというブランドは、まだ馴染みがないかもしれませんが、少し前に話題になったOYOが前身です。OYOといえば、世界中のホテルの一角やホテル全体を借り上げることで、サブスクのように各地のホテルを渡り歩ける、画期的なホテルサービスでしたが、残念ながら日本には定着しませんでした。
日本法人はその後、Tabistとしてホテルを丸ごと借りて運営するようなビジネススタイルに変貌しました。立地は良くも悪くも中心街からかなり離れており、鬼怒川温泉でどのような立ち位置を獲得するのか楽しみです。
同じくTabistの繋がりで、一気に熱川温泉まで飛んでみます。
東伊豆 熱川温泉
ホテルおおるり
熱川温泉のホテルおおるりは、そこに至るまでの流れも激動でした。
1954年に創業した熱川温泉ホテルは、バブル崩壊による客数激減によって、2004年に熱川岡本ホテルとしてリニューアルします。この岡本グループは、不正な投資商品を販売することで巨大な詐欺事件に発展、オーナー逮捕によって2011年に幕を閉じます。
その後、2014年からホテルおおるりとして営業していましたが、感染拡大の影響によって、6年後の2020年に閉館しました。
こちらも、2023年からTabistによって、伊豆熱川温泉ホテル玉龍として生まれ変わって営業を再開しています。
熱川グランドホテル
熱川グランドホテルは、おおるりグループになったタイミングは不明ですが、2018年まで営業していたようです。他のおおるりホテルよりも早いタイミングで閉館して、そのまま放置されている状況です。
住所を検索してみると、2024年2月にDRESORT1という法人が設立されていますので、近々動きがあるかもしれません。
熱川シーサイドホテル
私が調べた限り、熱川シーサイドホテルは、熱川温泉で最初に営業開始した「つちやホテル」が前身だと考えています。ご存じの方は教えていただけると助かりますが、これが本当であれば、1904年(明治37年)日露戦争が起きた頃から続く、かなり長い歴史を持ったホテルです。
2001年に倒産、2007年から2021年までの14年間、おおるりグループとして営業してきました。
その後、2022年に急拡大中のマイステイズホテルが買収して、現在は熱川オーシャンリゾートとして営業しています。
この時期のマイステイズホテルは、とにかく買収、リニューアルオープンで全国各地に拡大しており、おおるりグループのその多くがターゲットとなりました。マイステイズホテルをまとめて紹介します。
日光 湯西川温泉
平家本陣
再び日光に戻り、湯西川温泉にある平家本陣です。
2021年に閉館して、2022年よりマイステイズホテル平家本陣として営業してきましたが、2023年よりホテル名を一新、亀の井ホテル日光湯西川となりました。
奥日光 湯元温泉
おおるり山荘
同じく日光の湯元温泉では、おおるり山荘が営業していました。
このおおるり山荘、その前身は知る人はびっくりの南間ホテルです。
1882年(明治15年)に創業した南間ホテルは、上皇天皇が小学6年生の当時に空襲から逃れるために疎開した先でした。そして昭和天皇による玉音放送をこの地で聞いて、敗戦を受け止めることになります。
遠く離れた奥日光で敗戦を知り、そして数十年後に平成時代の天皇として務めたことを考えると、想像もつかないような思いがあったと察します。
そんな南間ホテルも2003年に閉館、おおるり山荘として2004年から2021年まで営業してきました。
こちらも2022年より、マイステイズホテルにより買収され、亀の井ホテル奥日光湯元として営業しています。
那須 高雄温泉
おおるり山荘
おおるり山荘は、那須の高台にありました。こちらは最初、地元の露天風呂として利用されていましたが、その後に整備が進み、2004年よりおおるり山荘としてオープンしました。
2021年に閉館して2023年には、マイステイズホテルによってリニューアルオープンする予定でしたが、現在のところ凍結?のような状態になっています。特に工事をしている様子もなく、すぐ近くでは源泉が垂れ流し、このまま放置されないことを願うばかりです。
那須 塩原温泉
同じく那須地方の有名な温泉地、塩原温泉では3件のホテルを展開していました。
ホテルニュー八汐
こちらも2021年に閉館、2022年からマイステイズホテルにより八汐荘として営業しています。すでに紹介した湯西川温泉、湯元温泉、高雄温泉もそうですが、少し高台になった目立つ場所が多いのは、おおるりグループの特徴です。
塩原温泉ホテル
塩原温泉の中心にあった塩原温泉ホテル、こちらも2021年に閉館しました。
2022年からはブリーズベイホテルに買収されて、一萬亭としてリニューアルオープンしています。この一萬亭は、日本最大級の足湯施設「湯っぽの里」からも近く、塩原温泉を満喫できるロケーションです。
ホテルおおるり
塩原温泉の3件目は、ホテルおおるりです。
こちらは2021年の一斉閉館の対象にはならずに、継続して営業しています。
もう1件、閉館することなく営業しているホテルがありますので、草津温泉に飛んでみましょう。
群馬 草津温泉
ホテルニュー紅葉
こちらのホテルニュー紅葉も、一斉閉館の対象にならずに現在に至っています。
立地や運営コスト、様々な理由から残す判断がされたと思いますが、おおるりファンにとってはうれしい決断だったのではないでしょうか。
ホテルおおるり
ホテルおおるりは、2021年に閉館。こちらもマイステイズホテルによりリニューアルオープンしました。現在は、亀の井ホテル草津湯畑です。
ここまで実に6件がマイステイズホテルとして生まれ変わっており、それだけ魅力や将来性があったのだと思います。
ホテルニュー七星
ホテルニュー七星は、少し早い2019年に閉館しました。
こちらはABアコモという、ホテル運営の受託会社によって、裏草津蕩としてリニューアルオープンしました。
私は足を運んだことがないのですが、表面的にはもっとも大きな変化をしているのではないでしょうか。
日光 中禅寺湖
最後は日光に戻って、中禅寺湖エリアです。
ホテル湖畔亭
このエリアでもっとも歴史が長く、明治維新が起きた1868年に開業した蔦屋旅館をルーツに持っています。その後、観光ブームに巻き込まれてメモリアルホテル蔦屋となり、拡大路線を進めてきましたが、バブル崩壊の影響で閉館。
2009年からおおるりグループによって、ホテル湖畔亭として営業することになります。そこから10年間営業して、残念ながら2019年に閉館しました。
こちらは2020年にリロホテルズ&リゾーツによってシンプレスト日光としてリニューアルオープン、2022年以降はゆとりろ日光とブランド名を変えて現在に至ります。
おおるりグループの拡大と衰退
おおるりグループが、バブル崩壊で閉館したホテルを買収することによって、鬼怒川温泉を飛び出して全国展開できた背景には、徹底した低価格路線がありました。自社運営による効率の良い送迎バス、ほぼ飲み放題・食べ放題に近いバイキング形式で数千円の価格設定は、景気が一気に悪化した日本でかなり注目を浴びたと察します。
歴史ある場所であるケースも多く、そして過去の口コミを見る限り、温泉の質はかなり高い評価が見られます。
ちょっと失礼な表現かもしれませんが、低価格と温泉には徹底的にこだわり、その他は必要最低限のサービス提供をすることで、ギリギリの経営をしていたのではないでしょうか。
2021年に多くのおおるりグループが閉館しましたが、感染拡大が本格化する2020年より前に閉館したホテルも多いです。お互いが近すぎたことにより、おおるりファンの奪い合いが起きていたのではないでしょうか。
そして感染拡大による行動制限がトドメを刺した感じでしょう。
密閉空間であるバスの送迎、客同士がどうしても密着するバイキング、動線が短くて同じような構造の部屋が並ぶ設計など、おおるりグループの武器がことごとく裏目に出てしまいました。
時代の変化は無情ですが、それでも継続して営業しているおおるりグループ、今後も応援していきたいです。
以上、2024年の春段階でのおおるりグループについて、現状を紹介しました。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。