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日光を代表する観光名所【華厳の滝】消える2つの可能性

日本三名瀑に数えられる華厳の滝、ここが大変なことになっています。

高さ97mの豪快な滝で、日光を代表する観光スポットのひとつですが、昨年2023年の秋以降の雨不足で、まったく様子が変わってしまっています。

現在の華厳の滝を紹介するとともに、ひょっとしたら華厳の滝が今後消えてしまうかもしれない?2つの可能性について検証してみたいと思います。

 

崖の上のミストシャワー

本日は2024年6月19日です。例年ならとっくに梅雨入りしていますが、今年はかなり遅れてしまっており、日光市街地では気温30度に届きそうなくらいの暑さが続いています。

華厳の滝は、いろは坂を登った先にある中禅寺湖から流れ落ちる滝です。

実は、中禅寺湖と華厳の滝の間には、高さ6mの中禅寺ダムがあり、ここで華厳の滝に流れる水量を調整したり、水力発電を行っています。華厳の滝が、人の手がまったく関与していない大自然の絶景だと思っていると、知らない方が良かった裏事情かもしれません。

水量を抑える機能を持った中禅寺ダムですが、その必要がないくらい中禅寺湖の水位が下がっています。現在は通常より50cm前後も低いようです。

もちろん、華厳の滝に流れ込む水量も激減しています。その結果はこの通り...「華厳の崖」のような景色になってしまいました。

わざわざ遠くから豪快な景色を見に来た方にとっては、かなり残念かもしれないですね。これはこれで、なかなか見られない貴重な華厳の滝ですが、いつもの轟音もないですし、まるでミストシャワーです。華厳の滝の周辺を静かに流れ落ちている、十二滝と呼ばれる細い滝の方が存在感があります。

ちなみに、水量の心配をする前の昨年秋は、このような感じでした。

毎秒3トンの水量が流れ落ちており、ざっくりですが、1秒間にクルマ2~3台分の重さの水が落ちているイメージです。

 

この景色をいつまでも見られるといいのですが、異常気象が続くと、いつの日か華厳の滝は消えてしまうかもしれません。華厳の滝が消えてしまう2つの可能性について、検証してみましょう。

 

可能性①降水量の激減

今回のように、秋の長雨がなく、雪があまり降らない冬を経て、さらに梅雨入りが遅れると、中禅寺湖の水量は減る一方です。

このまま地球温暖化が加速してしまったら、どうなるでしょうか。数十年前と比べると、真夏は極端に暑くなり、冬は雪が降らなくなりました。体感的には春と秋の季節はどんどん短くなってきています。

これほど中禅寺湖の水量が減るのが、数十年に1回だったのが、数年に1回になり、次の世代には、華厳の滝が過去の観光名所になってしまったら、とても残念なことです。

 

補水トンネルの存在

中禅寺湖の機能について、別なエピソードを紹介します。

大正5年(1916年)に、日光を流れる大谷川の水が、宇都宮で水道水として使われるようになります。

華厳の滝を流れた大谷川から取水して、日光市街地の地下を通って、水道水のニーズが激増した宇都宮まで運ばれました。

この大谷川の水は、当然ながら日光でも農業用水、生活用水として利用しますので、宇都宮に水を通すことによる水不足が懸念されました。

そこで中禅寺湖の水中に水門「宇都宮市水道補水水門」を造り、そこからトンネルを使って華厳の滝まで水を運ぶ案が検討され、実際に大正4年に完成しました。

結局は、中禅寺湖の水位が大きく下がることは起きず、しかもその後、中禅寺ダムが完成したことで、トンネルを使って大谷川の水を補うことはありませんでした。

 

観光を優先して、華厳の滝の水量を強引に増やそうとするのであれば、このトンネルに100年の眠りから目覚めてもらって、利用すればどうにかなりそうですが、今となってはトンネル出口の在処がわからないようです。

しかも、中禅寺湖の底の方から水を抜いてしまうと、さらに水位が下がってしまいます。今でも観光遊覧船の運行に支障が出ていますので、もっと悪影響が出てしまいます。

そういうわけで、中禅寺湖の水量が充分でないと、根本的な解決にならない状況です。

 

可能性②大洪水による崩落

もうひとつのストーリーは、華厳の滝が崩壊してしまうものです。

中禅寺湖は、国内でもっとも標高が高い場所にある湖で、華厳の滝や中禅寺湖の成り立ちは、男体山の火山活動に大きく影響を受けました。

元々険しい渓谷だった場所に、10000年以上前の男体山の大噴火があり、川の流れを塞いだことで中禅寺湖が生まれました。

大噴火によって、周辺に火山灰や軽石が降り積もったわけですが、この火山灰や軽石は、大雨によって流されやすく、男体山の一部は何度も崩れています。1902年の台風では、下流にある日光市街地まで土砂が流れ落ちてきて、当時の神橋が流れてしまうなど、大きな被害がありました。

そして華厳の滝の周辺も、そういった崩れやすい火山灰や軽石が多く含まれています。かつての華厳の滝は、800mほど下流にあったと考えられており、何度も崩落を繰り返して現在の位置まで後退しています。

近いところでは、昭和10年(1935年)に滝の上部の岩盤が崩落して、滝壺の近くにあった茶屋を直撃、4人の方が犠牲になってしまいました。昭和61年(1986年)にも崩落が起きて、対策工事が行われています。

ここで考えたいのは、先ほどの降水量激減とは反対のストーリーです。

台風の激増、線状降水帯による洪水など「降るときにはメチャクチャ降る」というタイプの異常気象も多発しています。黙っていても、徐々に崩落していく華厳の滝ですが、短時間で急激に降水量が増えて、中禅寺ダムも機能しないくらいに豪雨が集中してしまったら、滝周辺が崩れる可能性はあります。

これは歴史が物語っていますし、崩れる崩れないではなく「いつ崩れるのか?」というレベルの問題だと思います。いつの日か、土木工事では、どうにもならないレベルの土砂崩れが起きることは間違いないでしょう。

いずれにせよ未来には、華厳の滝は消えてしまって、中禅寺湖周辺の景色がまったく違うものになるはずです。

 

 

華厳の滝という観光名所が消えてしまう可能性について、2つの極端なストーリーを考えてみましたが、いかがでしたでしょうか。

いつまでもこの景色を楽しみたい一方で、数万年のほんの一瞬の姿を眺めているに過ぎないと、改めて感じるのではないでしょうか。