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キャリア・短編小説・NIKKO・Fukushima

キャリアカウンセラーに向いている人とは【人材紹介会社で働く場合】

キャリアコンサルタントの視点で人材業界についてまとめているブログです。

 

今回はキャリアカウンセラーに向いている人はどのような人だろうか、考えてみたいと思います。もしあなたが、人材業界に興味があったりキャリアカウンセラーの仕事を希望しているのであれば参考にしてもらえると幸いです。キャリアカウンセラーになるために必要な資格などはないので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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現在私は栃木県宇都宮市で人材紹介を行ったり、市役所など行政の委託業務を担当しています。様々な場面でキャリアに関する面談を行ってきましたので、その経験と資格取得の際に体系に学んだ内容がありますので合わせて紹介します。(人材紹介とは求職者に対して転職支援を行うサービスで、転職先の企業から人材紹介会社に報酬が発生する仕組みです)

 

栃木県のキャリアコンサルタント、吉田です。

人材業界で働いていると、キャリアカウンセラーになりたいという声をたまに聞くことがあります。実際にハローワークや人材紹介会社のサービスを受けていると、反対の立場になってサービスを提供することに興味を持つようです。

 

私自身も何度か経験があります。

求職者とコミュニケーションを重ねて、新しい企業への転職活動を支援していたときに「実は吉田さんみたいな人材の仕事にも興味が出てきました」と途中で言われたりします。これは光栄なことでうれしいのですが、人材業界へのチャレンジが成功するかどうかは難しいところなので積極的に誘うことは少なかったですね。

 

私自身が自社に誘った求職者もいましたが、残念ながら違う業界に転職してしまったりしています。ポイントは人材業界は誰かのサポート役だということですね。それと同時に、予算や目標を設定して数値管理もしなければなりません。

カウンセリングの部屋で見ているキャリアカウンセラーのイメージとは、かなりかけ離れているのが実態だと思います。

 

これらの体験も経て、私なりに思う「キャリアカウンセラーに向いている人」は以下の通りです。あくまで人材紹介会社で働く場合ですし、全部が揃っている必要はありません。

①ヒヤリングに集中できる

②プレゼンテーションができる

③数字に強く行動力がある

④資格取得への意欲がある

ひとつずつ解説します。

 

①ヒヤリングに集中できる

自分で書いておいて変ですが、この①が私は一番難しいです。自分が言いたいことがあると言わずにはいられないタイプだからです。

 

カウンセリングの基本は「答えは相手(求職者)が持っている」です。この姿勢を前提に耳を傾けて、タイミングよく質問を投げて求職者の考えを引き出します。あまりに直球で聞きすぎると求職者は身構えてしまったり、信頼関係を築く前の段階だと本音では話してくれないですね。

言いたいことがあっても、ぐっとこらえて求職者の

・そもそも、なぜ相談に来ているのか 「熟考して来たのか?とりあえずなのか?」

・転職に関する温度感はどの程度なのか「辞めたいのか?そうでもないのか?」

・求職者が何に困っているのか    「根本的な問題は何なのか?」

・抱えている問題によってどのような感情を抱いているのか

・転職する際に外せない絶対条件   (年収、距離、曜日時間、その他)

・その他希望            (企業規模、業務内容、社内環境、その他)

を時間をかけてヒヤリングします。

 

ここで求職者の話す内容をしっかり聞いて自分のものにすることが必要です。自分のものにするとは、自分の言葉で言い換えてフィードバックしてあげることです。これができると求職者は「この人は言っていることを理解してくれている」と感じます。

 

★心理学者シャイン(Schein,E.H.)の提唱するところの「キャリア・アンカー(長期的なキャリアにおいて拠り所、錨となるもの)」を把握できることが理想です。

キャリア・アンカーには専門性、経営管理、安定、創造性、自律、社会貢献、全体調和、チャレンジの8種類があります。仕事を通じて8種類のうち何を求めているのか、その視点でカウンセリングすることが効果的です。

 

★シュロスバーグの理論によるとキャリア転換の起こり方は3種類あるとしています。

・予期していなかったことが起きる、予期していたことが起きない場合

  → 解雇、早期退職、異動、昇進昇格、昇給、妊娠出産、介護など

・自ら決断して起こす出来事、起こさない出来事

  → 進学、就職、転職、結婚、サークル活動、コミュニティへの参加など

・人間の成長プロセスの過程で起きる出来事

  → 歳を重ねる、体力の低下、子どもが自立するなど

こういったときにどのように受け止めて、どのように感じたのか確認することでもキャリアカウンセラーとしての支援方針を考えることができます。

 

②プレゼンテーションができる

人材紹介会社でキャリアカウンセラーとして働く場合は、ヒヤリングをして業務終了にはなりません。実際には、求職者の強みや魅力を自分の言葉で要約して企業側にプレゼンテーションする能力が必要です。企業に採用してもらわないと報酬が発生しないからです。この能力は経験を積みながら徐々にブラッシュアップすると思っているので、キャリアカウンセラーとしてプレゼン能力を習得したい!という意欲でも充分です。

 

営業や接客業の経験のある方は身に染みて理解していると思いますが、自社の商品に魅力がないと提案するのはツライですね。魅力があったとしても、それを自分の言葉でオススメできないとまず売れません。

人材紹介会社も同様です。

企業側に「この方はいい人なので御社でどうですか?」ではまず面接にすら進みません。求職者とのヒヤリング結果から企業へのプレゼンまでを一連のストーリーにすることが必要です。

レベルの高いキャリアカウンセラーは、ヒヤリングをしながら企業側にアピールする材料を整理してしまいます。アピールする材料から逆算してヒヤリングするイメージです。

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「この方が御社に入ることによって、設計のポジションが埋まるだけでなく若手の育成も任せられるようになります。年齢はちょっと気になりますが、ベテランと若手の橋渡しになれる人柄です」

「この方は営業希望ですが、大学時代に広告企画を学んでいるので提案力は鍛えられています。しかも、連絡をすぐに返信してくれる方なので安心感があります」

「この方は事務経験が豊富なだけでなく、必要に応じて販売フロアでのヘルプも行っていました。最前線の接客担当や裏方の準備担当、いろいろな方の気持ちを理解して、スムーズなコミュニケーションができます」

 

このように、この求職者のことを知っているからこそできる提案を行うことが重要です。そしてマッチングによって、求職者と企業にとって双方WINーWINになることを自分の言葉で伝えたいところです。

 

③数字に強く行動力がある

求職者はキャリアカウンセラーと面談を行うことで、一旦気持ち的に落ち着くことが多いようです。しかし、その先の行動力が重要です。

 

求人票をもとに転職先を相談したり具体的に応募するようになると、タイミングが勝負です。いち早く興味がある企業に訪問してプレゼンを行ったり、面接日時のセッティングを行わないと人材紹介会社を使っている意味がなくなります。

企業からNGが出ても、しっかり原因を共有して次に活かします。

 

人と人を繋ぐビジネスなので機械的に売上を上げることは難しいですが、それでも何人かの求職者としっかり連携を取りながら行動する必要があります。何人かの求職者を同時に支援している状態を維持しないと、売上が安定して発生しないからです。

企業側にも定期的に連絡を行ったり優秀な人材を提案しないと、やがて相手にされなくなってしまいます。一概には言えませんが、売上の予算(目標)に応じて、常に何人の求職者を担当して、何社の企業に提案して、何人が面接まで進んで、と途中の数字を意識する必要があります。

支援する求職者を数字として扱うことに、最初は慣れないかもしれません。しかし、数字が安定していると自分自身のモチベーションに直結するので大切にしたいところです。結局頼りにされる数が自信になりますね。 

 

④資格取得への意欲がある

キャリアカウンセラーの仕事は資格がなくてもできますが、体系的に学んでおいた方が自信を持ってカウンセリングに臨むことができます。過去の教材に答えが書いてあるわけではないのですが、確実に自分の言葉や行動の引き出しが増えるはずです。

 

★ロジャーズ(Rogers,C)が提唱する「来談者中心的カウンセリング」は、キャリアカウンセラーによる直接的な指示では真の問題解決には繋がらないという考え方です。カウンセラーはヒントを渡すサポート役に徹して、求職者が自ら持つ潜在能力で軌道修正するイメージです。

 

★パーソンズ(Parsons,F)が提唱する「特性因子理論カウンセリング」は、人と仕事をいかにマッチングさせるかをテーマにしています。特性とは求職者の興味・適性・性格・価値観を意味しています。因子とはその職業の仕事内容・必要能力を意味しています。社会全体で人を効率的に配置するためには有効な考え方です。

「人の個性や適性は開発され、発見され、測定される」という土台に成り立っているため、科学的なアプローチや分析が必要です。

 

★クランボルツ(Krumboltz,J.D.)による「行動主義的カウンセリング」では、現在不適応を起こしている症状自体への働きかけを行います。求職者自身の問題行動を修正しますので

・具体的な行動目標の設定

・行動計画の作成と実行

・評価

を行います。誤解を受けそうですが、心に抱えている深い問題を解決するよりも、スキルの獲得や具体的な行動を優先する方法です。非常に有効な方法なので、現在積極的にキャリアカウンセラーに活用されています。

 

★エリス(Ellis,A)による「論理療法・認知療法」では、思考のプロセスに焦点を当てます。起きている現象や事実を「どのように受け止め、捉えて、解釈しているか」によって思考が決まるとしています。自分自身の「こうあるべき」という思考を柔軟に変えることを狙います。

「羞恥心粉砕法」「役割交換法」「ユーモアソング」など具体的な行動で問題を打開するので「行動主義的カウンセリング」との相乗効果も発生します。

 

 

代表的なキャリアカウンセリング理論を紹介しました。

 

キャリアコンサルタントの資格取得にもぜひチャレンジしてほしいですね。理論を学ぶのはもちろん、キャリアカウンセリングのロールプレイング試験も行います。繰り返しになりますが、資格を取得しても日々のカウンセリングの答えが見つかるわけではありません。

しかし実際にロールプレイングをしてみると、ヒヤリングに徹するのがいかに難しいのか実感できます。本人に気づきを促す質問を投げることがいかに難しいか実感できます。そして、自分なりに思い浮かんだ提案と本人の気づきのギャップに気が遠くなります。

 

資格取得を通じて学んだ内容は、どのような職種で働くことになっても活かすことができます。必ず人と一緒に仕事をすることになるし、仕事の先にも人がいるからです。

 

キャリアカウンセラーの仕事に興味があるのであれば、具体的に人材紹介会社の情報を見てみることをオススメします。モノを売る業界でないので、企業理念や社風に魅力を感じるかどうかが大きなポイントです。ぜひ面接の場などを利用して、その企業が何を大切にしているのか確認しましょう。

参考にしていただけると幸いです。