転職エージェントとして様々な方の転職支援を行ってきました。その経験から私自身が感じたことをまとめて、転職成功のポイントを紹介するブログです。
いつもは転職活動のポイントやキャリア形成の方法をキーワードにした内容を書くことが多いのですが、今回は自動車産業の拡大に貢献したフォードの功績に学びたいと思います。
顧客は自分が何が欲しいのかわかっていない
フォードの伝説や名言は数多いのですが、ここでは
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速く走る馬』と答えていただろう」
この言葉に注目します。
結論から書いてしまうと、フォードのような存在を自分の周りにつくっておくと、あなたのキャリア形成を考えるうえで大きく助かる存在になるはずです。
あなたの価値を主観的&客観的に評価して、適切なアドバイスをしてくれると期待できます。気づきを与えてくれる存在ですね。これを分解して説明します。
このフォードの言葉はマーケティングの場面、営業戦術の場面で登場することが多いです。新人研修でもよく引用されますね。
実際には綿密な技術開発とマーケティングをもって、ここまで自動車産業を大きくしたのでしょうが、科学的には説明しにくい新しい気づきがあったことも間違いありません。
顧客は本当は自分が何を欲しいのかわかっていない、このことをわかりやすく伝えるエピソードとして、スマートフォンで世界中の暮らし方を変えてしまったスティーブ・ジョブズの
「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」
という言葉も、ほぼ同じニュアンスが含まれます。
フォードの言葉は職種に関わらず、顧客の要望を聞いたり何かを提案する際にとても参考になります。参考にできるポイントはいくつかありますが、キャリアコンサルタント目線でまとめると以下の2つに絞ることができるでしょう。
目に見えない価値までイメージする
当時移動手段として馬車が主流、すでに蒸気機関や自動車の原形のようなものはありました。しかし、それを移動手段として想像できる人は一部のパイオニアに限られるということです。
転職希望者のなかには「自分が何をしたいのかわからない」という方も一定の割合で存在します。イメージでは10~20%の方は該当します。
キャリアコンサルタントが支援するときに「意向未整理型」という言い方をすることもあります。表現が悪いかもしれませんが、進む方向がわからない「迷子状態」です。
転職希望者が自分から「何がしたいのかわからない」と伝えてくれるときは話がそのまま進みますが、その他に
・本当はわかっているけど「わからない」と伝えてしまう
・わかっているつもりなので「わからない」と伝えない
といったパターンもあるので
「自分が何をしたいのかわからない」
「自分は何をするべきなのかわからない」
という割合は30%程度に上がるかもしれません。感覚値です。
この話で大切なのは、自分のことは誰よりも客観的に見られないということです。
自分の気持ちに正直な方も多いですが、客観的に自分を振り返って
「自分がもっとも活躍できる場所はどこなのだろうか」
「自分はどこに向かっていけばいいのだろうか」
を判断できる方は限られると思います。
このときに自分のことを理解してくれて、客観的にアドバイスをしてくれる方がいるかどうかでキャリア形成や成長は大きく変わります。
特別な訓練をしない限り、自分自身のことを客観的に遠くから眺めてイメージすることは難しいです。
「気づいているかわからないけど、あなたには◇◇の能力があるよ」
「あなたは◇◇をもっと伸ばせるように意識した方がいいよ」
と教えてくれる方を仲良くなくてもいいので、大切にすることをオススメします。
転職支援サービスの転職エージェントも、同じような立場でアドバイスをしてくれるはずです。登録面談やその後のキャリアカウンセリングを通じて、自分自身では把握できない
・強み(転職上の武器)
・弱み(転職上の懸念点)
を教えてもらうことができます。
キャリアコンサルタントの使う言葉で表すと、その転職希望者の「転職市場での価値」をざっくばらんに教えてくれます。あなたの担当が良いことしか言わない転職エージェントだったら、少し心配した方がいいかもしれません。
この「転職市場での価値」という考え方は非常に重要で、自分の希望がどれだけ通るかどうか転職エージェントがどれだけ動いてくれるかも決まります。
「転職市場での価値」
「転職市場での希少性」
この2つは同じ意味です。日々働くときにもこれを上げるようなキャリアを築くことが重要です。転職するかどうかは別として、自分の職務経歴書を作成しながら働くことができると理想のキャリアを描ける可能性がグッと高まります。
「私って他人から見たらどういうイメージなんだろう」
「私がどこで何をしていると一番輝いているかな」
客観的にアドバイスをしてくれる方を大切にしましょう。
フォードの言葉に戻ると、エンジンを初めて見たときに、移動手段として道路を席巻する自動車をイメージできるかどうかですね。
「へぇ、これが新しいエンジンか…」
で終わらせる方もいたでしょう。その一方で
「このエンジンは大量生産して自動車に使うことで、もっとも真価が発揮される。馬より速くて丈夫、そして安くすることで誰でもエンジンの恩恵が受けられる」
ここまで考えることもできます。すでに頭の中では、街中を自動車が走っている光景をイメージした方もいたでしょう。目の前のことだけではなくて、少し先のステップまでイメージを膨らませることは才能だと思っています。
潜在的なニーズを探る
フォードの言葉がここまでの名言になったのは、この言葉には潜在的なニーズの重要性が隠されているからだと思います。
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速く走る馬』と答えていただろう」
この言葉には
「結局馬が欲しいのではなくて、早く移動したいってことですよね」
という解釈が必要です。
「顧客は自分が本当は何が欲しいのかわからない」と、よく言われます。
そのため今までなかった商品を世に送り出すことで「こんな便利なものがあったんだ!」のマーケットをつくることができます。
平成30年間で生活、暮らし方、働き方が一変したケータイやスマートフォンは代表例です。
また顧客は本当のことを言うわけではない、とも言われます。
これは何かの提案を断るときによく見られますね。
自信がないことを何かのせいにしたり…
本当は人間関係の問題なのにお金の問題にしたり…
いろいろです。
転職の建前の理由 vs 本当の理由
私がキャリアコンサルタントとして転職希望者と面談をするときにも、相手が故意に伏せている課題と潜在的なニーズを読み取ることを意識します。
何から何まで暴くということでは決してないのですが、給与が低いことを理由に転職したい方が、実は給与だけではない家庭の問題だった、という例はよくあります。
会社の将来性に不安があって転職したい方が、実は上司とうまくやれていないだけ、みたいなことも当たり前のようにあります。
つまりキャリアコンサルタントは転職によって何を叶えたいのか、真のニーズを把握する必要があります。
表面的な給与を上げたい!
近くの会社がいい!
事務がいい!
みたいなニーズに応える求人を提案しても、なかなか先に進みません。
「こうしたらいいんじゃないですか、ああしたらいいんじゃないですか」
と言っても動いてくれません。
本当の不満を解決していないからです。
潜在的なニーズの掘り起こしは、たくさんの角度から会話を重ねないと難しいですね。無理矢理探すものでもありません。キャリアカウンセリングを通じて
「あれ?転職相談のはずだけど、実は辞めたくないんじゃないかな?」
「営業はもうやりたくないって言ってるけど、目の前で『ありがとう』と言われるとメチャクチャやりがい感じるタイプじゃん。対企業の営業ではなく対人の接客なら輝くんじゃないかな?」
と核心に気づくことが必要です。
だからといってズバッと指摘しても否定されるかもしれません。
別に、キャリアカウンセリングは核心当てゲームではないので、キャリアカウンセリングの場では気づいてもらえるように話を展開しますし、転職エージェントは具体的な求人を見せて考えてもらうことが多いですね。
どちらにしても相手の話を正面から受け止めるだけではなく、その裏にある潜在的なニーズを掘り起こすのは一緒です。フォードの言葉に戻ると
「馬はどうでもよくて、結局早く移動したいんですよね?」
です。
フォードの言葉を引用しながら
目に見えないものを想像するとは?
潜在的なニーズをつかむとは?
を私なりにまとめてみました。仕事でもプライベートでも応用が効く言葉です。
参考にしていただけると幸いです。