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鬼怒川温泉 vs 加賀温泉【前編】実は共通点も多い!2大温泉地を徹底比較

今回の記事では唐突ではありますが、栃木県にある鬼怒川温泉と、石川県にある加賀温泉を、いろんな角度から比較してみたいと思います。

いきなり「なぜこの2つの温泉?」という企画ですが、意外にも共通点が多いです。

①どちらも北緯36度台にあり、山間部にある温泉地帯である

②どちらも年間200万人前後の観光客が訪れている

③どちらも近隣に50万人規模の県庁所在地がある

④どちらも2023年にG7大臣会合が行われるほど、歴史的な価値が高い観光地である

 

かなり強引に感じるかもしれませんが、こうして共通点を並べてみると「あれ、似てなくもないかも…」と感じてもらえるのではないでしょうか。

鬼怒川温泉の景色はもちろん、後編では、実際に加賀温泉「ゆのくに天祥」と「ゆのくにの森」で過ごした様子を紹介しますので、きっと足を運んでみたくなると思います。

 

 

温泉地の歴史や観光を考えるきっかけにもなると思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

 

アクセス比較

最初はわかりやすいところで、首都圏からのアクセスを比べてみます。国内旅行はもちろん、成田空港や羽田空港を利用する外国人観光客にとって、観光地までのアクセスはかなり重要なポイントだと思います。

 

鬼怒川温泉

昭和以降の鬼怒川温泉の歩みは、東武鬼怒川線の歴史と重なっており、電車によるアクセスはかなり良いと言えるでしょう。南北3キロに広がる鬼怒川温泉は、駅から歩いて行けるホテルもあれば、ダイヤルバスが便利なホテル、駐車場が近くてマイカーが便利なホテル、このように移動の選択肢が多いのも強みです。

浅草から2時間強で鬼怒川温泉の中心地にたどり着けるのは、移動時間を楽しむのも含めてちょうどいい距離感ではないでしょうか。

 

加賀温泉

一方の加賀温泉、こちらは北陸新幹線を使えば、上野駅から金沢駅まで最速2.5時間程度で行けるようになりました。途中はトンネルだらけと思いきや、意外と長野や富山の景色を楽しむことができるので、あまり退屈しないと思います。

2024年春に開業したばかりの加賀温泉駅まで新幹線を利用するのであれば、各駅停車または乗り換えを駆使して3時間強というところでしょう。ホテル到着は上野駅から4時間くらいのイメージです。

これが早いかどうか、感じ方は大きく分かれるでしょうが、小さい子ども連れで行くには、途中休憩を挟まないと厳しいかな、と思います。あまり活用の場面はないでしょうが、隣接する小松市には空港がありますので、羽田から1時間で飛んでしまう奥の手があるのは強いです。

 

温泉地としての歴史

鬼怒川温泉

鬼怒川温泉の歴史は意外と浅く、江戸時代に釣りをしていた村人が発見したことがきっかけでした。湯治場としての役割が大きかったのですが、江戸時代は大名や僧侶しか入ることが許されない温泉でした。

これには、由緒正しい温泉だから、という理由があるのですが、そもそも温泉が発見されてから一部の村民だけが儲かってしまって、そのやっかみで日光山に取り上げてもらった、という説もあるようです。

明治以降は同じ日光でも、観光旅行のテッパンである世界遺産エリア、さらには、G7大臣会合が開催された中禅寺湖の人気が高まって発展していきました。その方面に一点集中するかと思いきや、当時の東武鉄道の社長が鬼怒川温泉の可能性を見抜いて鉄道を敷いたことから、一大温泉地へと急成長して現在に至っています。

 

加賀温泉

加賀温泉は、いくつかの温泉が集まった温泉郷なので、一概には説明できないのですが、江戸時代に発見された片山津温泉を除くと、山代温泉、山中温泉、粟津温泉は1300年以上の歴史があります。数々の伝説が残っていたり、北大路魯山人や与謝野晶子といった歴史に登場する著名人の利用も見られます。

開湯当時から営業している宿があり、江戸時代にはすでに大きな温泉街が形成されていたため、加賀温泉は北陸ではかなり有名な存在でした。

バブル経済の崩壊によって大打撃を受けた点は、どちらの温泉地にも共通しますが、撤退後の巨大ホテルを格安ホテルグループが買収する、というビジネスモデルが席巻して現在に至っています。

 

再生への取り組み

バブル崩壊後の再生に向けた道のりは、切り口によってかなり印象が変わると思いますので、あくまで私自身が感じている印象として捉えていただけると助かります。

 

鬼怒川温泉

バブル崩壊後に、5つの市町村が合体した日光市は、世界遺産と数々の温泉地を抱え持つ、面積的にはかなり大きな自治体になりました。

1990年代には、団体客の激減によって鬼怒川温泉全体、そしてメインバンクとして機能していた足利銀行の破綻が連鎖して、一時は壊滅的な状況になりました。

そこからは、行政主導というより、個々のホテルの努力と東武鉄道が牽引して現在に至っているイメージです。特に東武鉄道は、経営再建も兼ねて金谷ホテルグループの吸収合併、鬼怒川温泉まで毎日SLを走らせたり、スペーシアXの新規導入など、日光を見捨てない運命共同体のような熱いものを感じます。

 

加賀温泉

一方の加賀温泉は、企業努力がありながらも、行政が積極的に廃墟ホテルを解体したり、リノベーションを推進してきた感じがあります。総湯と呼ばれる共同浴場が代表的ですが、温泉街の再建に向けて行政が問題意識を持って具体的な取り組みがあります。このあたり、地元の方々はどう感じているのでしょうか。ぜひ伺ってみたいところです。

 

50万人都市との関係性

鬼怒川温泉

栃木県内において、日光と宇都宮は隣同士の位置関係です。宇都宮市は人口51万人、2023年には新しい交通システムとしてLRTを導入しました。観光客の目線で見てみると、日光、特に鬼怒川温泉との連携みたいなものは残念ながらありません。

江戸時代の宇都宮は、日光に向かう宿場町として賑わってきた歴史がありますが、今現在、日光に向かう中継ポイントと捉えている方は、まずいないのではないでしょうか。あくまでビジネス上、または宇都宮で開催されるイベント目的で他県から人が集まる傾向が強いです。

 

加賀温泉

こちらの加賀温泉も、46万人都市、金沢市との強力な連携があるわけではないのですが、個人的に感じた日光との違いは2点です。

・金沢大学と加賀温泉が連携して観光を盛り上げている

・金沢駅に降り立った瞬間から観光モードに突入しており、街並みも伝統工芸の町としての一体感を感じる

極端な表現ですが、目的地が加賀温泉だとしても、金沢駅で一度降りて、街歩きをしたり、兼六園を散策したり、せっかくだから一緒に楽しまなきゃもったいない!という期待があります。

このあたりは、総合力で観光ビジネスを盛り上げている感じがして「また行きたい!」というモチベーションになっています。

 

実際の観光データ

鬼怒川温泉

鬼怒川温泉は公開されているデータによると、バブル崩壊直後の1993年に年間341万人を記録したものの、その後増減を繰り返しながら、感染拡大直前の2019年は176万人(川治温泉含む)に落ち着きました。

外国人観光客は、日光東照宮をはじめとする世界遺産、中禅寺湖や鬼怒川温泉まで含めて12万人弱です。

2018年のDMO日光調査によると、外国人観光客のうち、実に56.7%が日帰りで日光を訪れています。まるで、直行直帰のサラリーマンですね。「ゆっくり過ごす場所」にも「遊び倒す場所」にもなっていないのは、かなり残念な現状です。

 

加賀温泉

年間の宿泊客数では、新幹線開通により200万人まで伸びましたが、徐々に落ち着いて、こちらも感染拡大直前の2019年は年間185万人、注目するべきは外国人観光客が8万人以上含まれていることです。

特徴が異なるそれぞれの温泉、工芸体験型のコンテンツ、加賀温泉駅の開業など、人気獲得に向けて打ち手が多いのは明るい材料です。

 

 

まとめ

かなり強引な比較ではありますが、ざっくりとまとめると、日光は個々のチカラでどうにか盛り上げており、宇都宮との関係性も薄いです。宇都宮は工業団地や商業的な存在感が大きいので、歴史や自然でアピールしたい日光とのコラボは、よほど魅力的な観光動線を用意しないと難しいかもしれません。

加賀温泉は、オール石川の一部と表現できるでしょう。もちろん、それぞれの温泉が独自色を出して、魅力を発信しているのですが、街全体、そして玄関口となっている金沢駅から同じカラーで染まっているイメージです。

旅行全体で「Japan」を感じるのは、残念ながら加賀温泉かな、という印象です。

後編では、その加賀温泉を実際に利用した映像を中心に、観光について勝手に未来像を考えてみたいと思います。ぜひそちらもご覧ください。