2023年夏に予定されているアルプス処理水の海洋放出ですが、近隣の海洋生物にとってどのような影響が起きるのでしょうか…?
また食物連鎖の最後地点である、私達には影響があるのでしょうか?
食物連鎖による放射性物質の生態系濃縮(生物濃縮や生体濃縮も同意です)は研究が進んでいる部分もありますが、海洋放出反対の大きな要因にもなっています。
政府と東電が進めている海洋放出に対する懸念を、大きく2つにまとめてみましたので、参考にしてもらえるとうれしいです。
アルプス処理の精度は大丈夫なのか?
2018年に東電が発表した内容は、またもや廃炉に向けた心配を大きくしました。
内容としては、アルプス処理水は別名「トリチウム水」と呼ばれるほど、トリチウム以外の放射性物質が取り除かれたものであるはずが、基準値をはるかに超えた放射性物質が混ざっていた、というものです。
つまり、アルプス処理を行った処理水は、トリチウムだけを問題にすれば良かったはずが、他の放射性物質も基準値以上混ざっていると、そもそもの前提条件が変わってきます。
生態系濃縮は起きるのか?
アルプス処理水は、沖合1000m以上先から海洋放出します。
一見、万全な対策をしているようですが、トリチウム対策で100倍以上に薄めるということは、それだけ海洋放出する期間が長くなります。
1000m先だとしても、同じ場所からずっと流すことになります。
薄めることも、遠くに海洋放出することも、ポイントとなるのは食物連鎖による生態系濃縮(生体濃縮・生物濃縮)です。
生態系濃縮とは?
生態系濃縮とは、極端な例ですが、まず放射性物質が海中のプランクトンに取り込まれ、体内に溜まります。
放射性物質が溜まった状態で、そのプランクトンを小魚が食べます。小魚はプランクトン経由以外にも放射性物質を吸収しています。
こうして小魚の体内に放射性物質が溜まり、その小魚を大型の魚が食べて、大型の魚には一定量以上の放射性物質が溜まることが懸念されています。
もちろん、食物連鎖の最後はヒトなので、もっとも大きな影響を受けることになります。
この考え方だと、今回海洋放出するアルプス処理水がWHO飲料水基準で語られることは、まったく意味がなくなります。
魚介類の体内で、どれだけ放射性物質が蓄積されるのか、様々な実験や研究が行われていますが、燃料デブリに直接触れながら溜まった汚染水には、理論上63種類を超える放射性物質が含まれている可能性があります。
アルプス処理では、63種類の放射性物質のうち、トリチウムを除く62種類を安全なレベルまで処理することができます、という前提も意味がなくなってしまいます。
トリチウムだけに注目しがちですが、何十年単位でどのように海の生態系に影響を与えることになるのか?タンクの汚染水は本当はどうなっているのか?科学的なアプローチを改善する必要がありそうです。
関心を持ち続けられるように
今回の記事では、アルプス処理水の海洋放出を行ったとして、その後どのような懸念があるのか考察してみました。賛成!反対!という一方的な結論を伝えたいわけではなく
・本当にこのまま海洋放出していいのか?
・何年後、何十年後に、これも風化されないだろうか?
について、みんなで考えていきたいと考えています。
タンクを置く場所がないし、廃炉作業のジャマだから海洋放出しました…そうしたら取り返しのつかないことになりました…こんな未来は絶対に避けなければなりません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。