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アルプス処理水って何?安全なの?【福島第一原発事故から12年を振り返る】

2023年夏に海洋放出が予定されているアルプス処理水ですが、なかなか直感的に「それって何なの?」や「本当に安全なの?」がわかりにくいと思います。

様々な資料や説明がされていますが、なるべくカンタンにまとめてみますので、今回の記事を通して改めて考えていただけると幸いです。記事内では、各省庁、東電のHPより一部資料を使用しています。

(2023年7月現在の情報です)

 

放射性物質の拡散

話は2011年3月11日、東日本大震災までさかのぼります。想定以上の津波が押し寄せたことによって、原発の電源喪失、水素爆発に至りました。この水素爆発によって、放射性物質の拡散が起きました。

世界の原発事故としては、チェルノブイリ原発事故に次ぐ重大な影響を与えたことになります。

ここからの対策を大きく分けると次の3つです。

 

原発事故の後処理

除染作業

実際に撒き散らされた放射性物質を除去する作業です。直接作業なので、報道でも目にすることがありますが、放射線量の高いものを集めたり洗い落とします。

 

燃料デブリを取り出す

燃料デブリとは、溶け落ちた核燃料が冷えて固まったものです。燃料デブリは、高温になると核物質がはじまるので、現在は水を入れ続けて冷やしています。

最終的に取り出しが完了するのは、うまくいっても30~40年後と言われています。

 

汚染水の処理

現在、政府や東電が進めているのが汚染水の処理です。

汚染水とは、燃料デブリを水で冷やしていることによって発生する、放射性物質を含んだ水、そして爆発によってむき出しになった原発を流れ落ちる雨水や地下水のことです。

この放射性物質を含んだ汚染水を、充分に安全な水にするためにアルプス処理を行います。この結果がアルプス処理水ですが、すでにタンク1000基以上が溜まっているいる状態です。このままでは保管する場所が足りないだけではなく、廃炉作業(燃料デブリの取り出しなど)にも支障が出るので、安全に海洋放出する計画が立ち上がりました。

 

アルプス(ALPS)処理とは

アルプス処理とは、多核種除去装置のことであり、これによって放射性物質63種類のうち、62種類は安全なレベルまで除去することができます。

別な表現をすると、アルプス処理では、放射性物質であるトリチウムだけは取り除くことができません。

 

このトリチウムは、水素の仲間であり、我々の体内や雨水にも含まれているものです。この自然に存在しているトリチウムを、海水で100倍以上で薄めて海洋放出する予定です。

海洋放出するアルプス処理水は、WHO飲料水基準の1/7のトリチウム濃度、沖合1000m先で海洋放出(定点放出)する予定です。

つまり、福島の場合は「原因が原発事故だから、これほど注目されている」という状況でもあります。

 

反対意見や慎重意見

この海洋放出に関しては、様々な反対意見や慎重意見があります。専門家による科学的根拠を除くと(これは別な記事でまとめます)次の3つにまとめられると考えられます。

事故直後から政府や東電との信頼関係が築けていない

事故直後から、水素爆発があった福島第一原発、東電本社、政府のコミュニケーションができておらず、我々には何が起きているのかさっぱりわかりませんでした。事故や被害の大きさをごまかそうとしていた経緯はありましたが、結果的に

・どこまでが自然災害なのか

・どこからが人災なのか

はっきりしないまま、現在に至っています。

 

さらなる風評被害が予想される

どれだけアルプス処理水の安全性を訴えても、海洋放出に反対する国もあるし、納得できない日本国民もいると思います。

「100倍以上に薄めています」

「他の国ではもっと濃度が高い状態で海洋放出しています」

と言ったところで「だから安全なのか?」どうかは別問題ですし、仮に安全であっても、福島産の水産物がブランド力を持つには、大きなハードルがあると思います。

 

現在進行形の不透明感がある

公明党代表の「直前に迫った海水浴シーズンは避けた方が良い」といった、マイナス影響が前提であるような発言をしたり、そもそもアルプス処理水を溜めておく場所の限界があることは当初からわかっていたはずなので、もっと早い段階から議論することができたはずです。

原発問題全般に言えることですが、いつになったら何が解決するのか、誰が責任を取るのか、見えないことが信頼関係の構築にあたって壁になっています。

 

これからどうするか?

この状況から進めていくために、それぞれの取り組みがあります。

経済産業省

復興庁

東京電力

5つ?3つ?18?

正直なところ、表現の足並みが揃っていない点は気になるのですが、言っていることはほぼ一緒です。

重要なのは、2015年に政府は

「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」

と約束している点です。政府と地元で、海洋放出に対する理解はかなりギャップがあると感じています。

アルプス処理水の安全性を、懸命に福島の方々に説明して理解を得ることは大前提ですが、日本全国、さらには諸外国からも

「アルプス処理水の安全性は理解しています。どんどんフクシマの魚を売ってください」

と言ってもらえる関係性を築けるかどうかと考えます。この環境が実現すれば、風評被害の心配なんてなくなりますし、本当の意味で復興の実感が得られると思います。

福島の漁業関係者だって

「アルプス処理水を次の世代に残すわけにはいかない」

「アルプス処理水のタンクが廃炉の邪魔になるなら、撤去するしかない」

「復興を確実に前に進めなければならない」

こんなことはわかっているはずです。実際のところ、政府と向いている方向は一緒であるはずです。

 

 

まずは、1人1人が

「なんとなく海洋放出に賛成」

「何となく反対」

ではなく自分事として考えてもらえるように、ブログとしてまとめてみました。少しでも参考にしてもらえたら幸いです。