人材紹介会社のより良い活用について、転職エージェントとしての経験を交えて紹介しています。いくら実力主義とか「職能で考える」とか言っても、自分にとって良い企業に入社することは重要です。
あなたが(特に初めて)人材紹介会社を使って転職しようかな、と考えていたり、人材紹介会社で転職エージェント(キャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザー、等々)として働いているのであれば、参考にしてもらえると幸いです。
- 【ポイント①】退職理由は、現在勤めている会社では叶わないのか考えてみる
- 【ポイント②】建前の退職理由・本音の退職理由・本当に叶えたいことを整理しておく
- 【ポイント③】プライドや経験を全部捨てる覚悟を決める
- よくあるNG例
- 【ポイント④】オファー面談(内定者面談)で懸念点を払拭しておく
今回のテーマは、入社後の活躍です。転職を考えている方にとっては、当然転職することが目先のゴールですし、転職エージェントにとっても転職先を決めることが目先のゴールです。とはいえ、せっかく新しい企業に入ったからには、退職理由、転職理由がクリアになったのかどうか考えなければなりません。
転職しても同じ苦労を味わったり、同じ悩みを抱えて早期退職してしまったら、元も子もありません。「転職しなければ良かった…」はどうしても避けたいと思いますので「入社後に、こんなはずじゃなかった…」とならないためのポイントを3つ紹介します。
【ポイント①】退職理由は、現在勤めている会社では叶わないのか考えてみる
よほど環境が悪い会社でない限り、おそらく転職エージェントとの面談でも、このポイントは提案される可能性が高いです。「経理の仕事をやってみたい」とか「どうしても営業が向かない」という退職理由だとします。背景は色々あると思いますが、こういう退職理由の時に、転職エージェントは「それは今の職場では叶わないのですか?」と考えます。あなたが転職エージェントでも同じことを思うのではないでしょうか。
現在の会社で異動を相談したり、本業は頑張りながら他の時間で勉強や実践してみる、いくらでも転職する前にできることはあります。この「今できること」をやってみないと、次のような残念な結末になる可能性があります。
・経理の仕事に実際に就いてみたら、それも向いていなかった
・待遇を下げてでも、やりたいことではなかった
・離れてみたら、営業の仕事が楽しかったと考えるようになった
これだと「転職しなければ良かった」となってしまいます。もしあなたが、人間関係では不自由していない会社だったのに転職に踏み切ると、なんか違う環境で、なんか違う挑戦をする、そこでもう一度人間関係を築く、と大変な目に遭います。
転職理由が「新しいチャレンジがしたい」や「社風や労働環境が悪すぎる」のように、自分の想いであったり環境要因であれば別ですが、例えば「職種を変えたい」であったり「残業を減らしたい」のように「転職しなくても、どうにかできる悩みではないですか?」という背景だったら、まずはどうにかしてみる!がおすすめです。面接でもアピールポイントになります。
【ポイント②】建前の退職理由・本音の退職理由・本当に叶えたいことを整理しておく
わかりにくいかもしれないので、少し極端な例で解説します。
例えば「同じ職場の同僚に告白したけれど、うまくいかなかった」というケースを考えます。それまでの信頼関係があれば、仕事に影響を与えずに、むしろ良い友人関係になるかもしれませんが、なかなか難しいと思います…
また別なきっかけがあって転職をする時に、転職理由をどう整理しておくか考えましょう。本音は「同僚との関係が気まずい」です。転職エージェントとの面談で「今の会社の方向性に疑問を感じる」とか「年収をもっと上げたい」と建前の転職理由を伝えたとします。
転職エージェントは、あなたとの面談を終えて、紹介したい企業の人事担当者にこのようにプレゼンをします。
「この方は、会社の方針や理念を大切にします。御社にはピッタリだと思うので会ってみませんか?」
「この方は、バリバリ働いて給料を稼ぐことがモチベーションです。気が合うと思いますよ」
前者の場合、その企業の理念に共感できなかったら、気まずさ全開の企業面接になります。後者の場合も「そんなにバリバリ働きたいわけではないんだけどな…」と思っていたら、これまた悲惨な企業面接になります。さらに転職エージェントがやる気だと、企業に対して勝手に年収交渉まで行うようになります。なぜなら「年収がもっとも高い企業、またはシンプルに今より年収が上がるなら、その企業に入社を決めるはずだ」と考えるからです。
年収交渉まで行って、無事に入社できたとしても、相当ハードルを上げた状態で現場に入ることになります。「好きだった同僚との関係が気まずい」くらいの転職理由が、なぜか年収交渉まで行って、入社した時には待遇に見合った活躍を期待される「なんでこうなった…」という地獄の転職になってしまいます。
こうなる前に軌道修正はいくらでもできると思いますが、建前の転職理由を用意する場合には、それを転職エージェントが積極的に使っても大丈夫な転職理由にしましょう。
【ポイント③】プライドや経験を全部捨てる覚悟を決める
転職エージェントとして辛いのは、転職させられないことよりも、転職した先の会社をすぐに辞めてしまうことです。ミスマッチによる早期退職、というやつですね。この原因は様々あって、絡まって合わせ技で早期退職…となるので、個別の解説は避けますが、ここでは求職者本人の課題にフォーカスしたいと思います。
別な記事でも書いていますが、人材紹介会社を利用して転職を実現できたってことは、企業目線で考えると、人材紹介会社に安くない紹介手数料を払ってまで採用したい人材だと判断した、ということです。
それなりのスキルや経験が評価されていると思いますが、その評価はいったん捨てて入社することを強くおすすめします。前職の成功体験、苦労経験、年齢、役職、年収、これらは、聞かれたら答えても構わないでしょうが、基本的には誰も興味がありません。
転職すると人間関係がゼロからスタートすることが多いと思います。そうなると、あなたの過去に関心があって、それを気にするのはあなた自身だけ。つまり、その過去にこだわっていると裏目に出ることが多いです。
よくあるNG例
・スムーズに敬語が出てこない
・素直に話を聞けない
・「はい」と返事ができない
・聞きたいことが聞けない
・でも自分の話はしたがる
・周りに頼れない
・感謝や挨拶の言葉がない
・転職先のやり方にすぐに疑問を持つ
プライドや経験が身体に染みついていると、転職後にすぐにボロが出ます。当然、人間関係を築くことが難しくなり、仕事もうまく進みません。せっかく転職したのに自滅です。早期退職は(一般的には)誰にとってもプラスではないので、全部捨てる覚悟で臨みましょう。
【ポイント④】オファー面談(内定者面談)で懸念点を払拭しておく
オファー面談は、入社前の最後の交渉チャンスです。就業条件や業務内容、役割などを確認して内定承諾を行いましょう。転職エージェントを間に挟んで転職活動を行っても、希望条件が叶っていないケースも多いと思います。様々な理由が考えられますが「条件が悪いから辞退しよう」と一面的に捉えないで、しっかり確認することをおすすめします。よくある給与に関しては
・中途入社の給与ベースが完全に決まっている
・数カ月後には希望条件が叶う見込みがある
・面接してみたら、即戦力性で不安があった
・他社員とのバランスを考えて調整した
このあたりの背景を正直に回収しておいた方が、入社後のモチベーション維持に繋がります。就業条件の数字だけを見て「あまり評価されなかった…」とネガティブに考えるのはNGです。
以上、私なりにポイントを紹介しました。「こんなはずじゃなかった…」は何においても避けたいですね。少なくても人生の大きな転機で自滅することがないように、アドバイスを書いたつもりです。参考にしてみてください。