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栃木発「プロフェッショナルな自分を目指そう!」

デザインの勉強って、製造業・営業職で役に立つの?【文星芸大キャリアガイダンス2022年】

前回は「芸大の勉強と実際の仕事の関係性」ということで、日々勉強している内容は、サービス業や事務職に活かすことができるのか?どのように活かせるのか?について講義を行いました。

 

 

今回は製造業と営業職について考えてみたいと思います。前回のサービス業と事務職については、相手がお客さんなのか同僚なのか、という違いはありますが「何かを作って伝える」という場面が多い、という話をしました。店のポスターなどがわかりやすいと思いますが、現場スタッフで作ってしまって掲示する仕事があった際には、勉強しているデザインがストレートに発揮できます。

 

製造業や営業職は、デザインが活きる!というよりは、結果的に製造業に就職する生徒は多いだろう、という視点で解説をしていきます。また、ガッツリ営業職でなくても、仕事をするうえで、何かしら営業的な考え方は必要になります。

製造業も営業職も、大学生から見ると遠い存在かもしれませんが、いきなり自分のこととして考える可能性がある業種・職種です。その観点でまとめてみました。

前回アンケートの結果、営業職を希望する生徒はいませんでしたので、今日の講座は製造業をメインに話します。あなたが「製造業」って聞いて思い浮かべる会社はどこでしょうか?会社名、メーカー名ですね。

順不同で重複しているメーカー名もありますが、結果は以下の通りです。

・トヨタ

・日産

・ホンダ

・ソニー

・住友

・東芝

・パナソニック

・川田工業

・小林製菓

・明治

・ヤマザキ

・日清

・日立

・ダイソン

・バンダイ

・三菱

こうして見ると、日産、ホンダ、パナソニックなど栃木県内に工場があるメーカーの複数回答が目立ちますね。本題からは少し外れてしますが、これらのメーカー、昭和から続いているメーカーばっかりです。長く生き残ることは確かに強い会社の証しかもしれませんが、この20〜30年で大学生の印象に残っているメーカーが、新しく入れ替わっていないことも問題です。

日本の製造業に関しては

「もっと薄く」

「もっと軽く」

「もっと省エネに」

「もっとコストを抑えて」

のように、ひたすら真面目に改善しよう、と意識が向きすぎているのかもしれません。生活をガラッと変えるようなイノベーションが起きないのは課題ですね。日本のメーカーが、世界を席巻するようなイメージは難しいのではないでしょうか。

今こうしてLINEでアンケートを行って、日々思ったことをTwitterやFacebookで投稿して、Amazonで買いたいものを注文して、ヒマがあればYouTubeで時間を潰して、全部海外製のスマホで用事が済んでしまっています。生活の何から何まで、ここ最近生まれた海外のサービスで囲まれています。

芸術を勉強している文星芸大の学生でも、必ず製造業に進む生徒がいるはずです。ただ物を作る製造業も否定はしませんが、生活や社会に対してゲームチェンジを挑むようなメーカーにチャレンジするのも面白いと思いますので、参考にしてみてください。

 

さて、一口に製造業と言っても、様々なメーカーがあります。何を作っているのか、どのくらいの規模で作っているのか、ここ数年のヒット作を狙っているのか、定番なのか、価格帯や地域特性など含めたら、いくらでも細かくカテゴリー分けできそうです。

考えやすくするために、製造業のデザインに関するアンケートを2つ行います。回答のルールはありますが、ぜひ自由に考えてみてください。

 

①あなたはスマホの本体を作るような、大きなメーカーに勤めているとします。仮にあなたがデザイナーとして、次に世に出すスマホをデザインするとしたら、どのようなデザインを考えますか?

◆機能的な進化は考えないでください。

◆形、色、素材など五感で伝わるもので考えてください。

回答結果は以下の通りです。

◇柔らかい(持ちやすい)

◇柔軟性がある(曲がる)

◇触り心地が良い素材にする

◇カラーバリエーションを増やす

◇薄くて軽い

◇丈夫で軽い

◇大画面

◇低反射の見やすい画面

◇2画面デザイン

◇メガネデザイン

◇最初から手帳デザイン

◇長方形+赤+つるつる

◇木製

◇リサイクル素材

◇セミオーダー(カスタマイズ可)

◇シンプル

このような結果になりました。かなり具体的に回答してくれた生徒もいますし、自由度が高いカスタマイズができるような回答も多かったですね。表現は異なりましたが、カラーに関する意見が多いのは、さすが芸大ってところでしょうか。

 

②あなたは服飾を手掛ける小さい会社に勤めているとします。この秋冬にかけて、新作の帽子を手作りすることになりました。あなたがデザイナーだとして、どのような帽子を開発(デザイン)してみたいですか?

◆機能的な進化は考えないでください。

◆形、色、素材など五感で伝わるもので考えてください。

◆その帽子をいくらで販売したいのか、その理由も考えてください。

◆できれば【商品名】その理由も考えてください。

回答結果は以下の通りです。

◇【デザイン】ポケット付き

◇【デザイン】クッション

◇【デザイン】温度調節可能+耳当ての取り外し可能→4,000円「手作りだから」【商品名】もこもこ耳当て付きキャップ「名前から機能がわかるから」

◇【デザイン】ナチュラルカラー+耳を守る→1,200円「他の帽子と同じくらい」→【商品名】あったか耳当て帽「機能性や形状がわかるから」

◇【デザイン】形が変わる

◇【デザイン】けもみみ(獣耳)→5,000円「手作りだから」

◇【デザイン】耳当てが付いている→1,650円「買いやすく安すぎない」→【商品名】防耳はっと

◇【デザイン】秋冬イメージ→5,000円「良い素材を使うから」→【商品名】winter color hat

◇【デザイン】イチョウ柄→1,220円

◇【デザイン】日用品の形→2,525円「笑顔になってほしい」

◇【デザイン】ふわふわのベレー帽→2,100円→【商品名】ふわもこベレー帽「ふわふわもこもこしているから」

◇【デザイン】ふわふわで白50オレンジ50→1,399円「妥当かな」→【商品名】ぽかぽかぼうし「暖かそう」

◇【デザイン】もこもこが取り外し可能→1,530円→【商品名】ピンポイント暖かキャップ「暖められる場所を変えられるから」

◇【デザイン】ふわふわして暖かい→1,500~2,000円「他の帽子を同じくらい」→【商品名】ひつじのぼうし「ふわふわして暖かい→羊の毛」

◇【デザイン】軽くて暖かい→3,500円「手作りだから」→【商品名】フェザー「軽いから羽根の意味」

◇【デザイン】柔らかくて保温性がある→5,000円「手作りだから」→【商品名】柔らか折りたたみ帽子「柔らかいところが特徴だから」

◇【デザイン】秋冬を連想させる薄い赤のふわふわ→2,500円「秋冬に適したデザインと機能」→【商品名】ふわあか「チャームポイントを覚えてもらうため」

◇【デザイン】LGBTQキャップ→500円「ワンコイン」

◇【デザイン】顔が見られにくい→1,000円「高すぎない値段」→【商品名】秘密帽子「恥ずかしがり屋にオススメしたい」

◇【デザイン】マスク付き→3,000円「マスク分の布面積が大きい」→【商品名】フェイスニット「顔を覆うニットだから」

◇【デザイン】1~100の番号がデザインされている→1,500円→【商品名】100番帽子

◇【デザイン】手編みのニット帽→3,600円「手作りだから」→【商品名】あたたかニット帽「ニットの暖かさと手編みの温かさ」

◇【デザイン】布が厚いニット帽→499円「ワンコイン」→【商品名】保温帽子「伝わりやすいように」

◇【デザイン】季節の色を生地に使い保温性もある→850円「利益が出やすいように」→【商品名】思いも心もぽっかぽか もこふわ帽子「心も体も温かく」

◇【デザイン】唯一無二のデザイン→1万円前後「デザイン重視の1点もの」→【商品名】木の葉のアンティークハット「秋らしい木の実モチーフの装飾が施されているから」

◇【デザイン】ツギハギ→2,000円「できるだけ安く」→【商品名】ツギハギボウシ「わかりやすく」

◇【デザイン】温かさ重視→3,000~4,000円「安いとそれだけの生地になるから」→【商品名】ホットハット

◇【デザイン】触り心地(カシミア等)が良い→10,000~20,000円「原材料が高いから」→【商品名】ふわふわカシミアニット帽「カシミアを使っていることをアピール」

◇【デザイン】光り輝くゲーミング帽子

◇【デザイン】ワンポイントが全部違うようにする

◇【デザイン】透明→50円→【商品名】透明すぎる帽子「わかりやすいから」

表になっていないので、見にくいかもしれませんが、最後の商品名まで回答してくれた生徒も多いですね。「どんな帽子?いくら?名前は?」を一度に考えていったら大変ですが、斬新な回答もあります。

「あたたたい」「暖かい」「温かい」の漢字の使い分けも見られ、ちゃんとイメージして考えてくれているのがわかります。価格帯も数十円から数万円と幅広いです。

 

スマホと帽子でそれぞれの新商品を考えてもらいましたが、考え方が結構違うことが実感できたのではないでしょうか?

スマホは機能がどんどん進化して、実は見た目の変化が小さいです。10m離れたら機種の見分けなんて不可能なので、手に持った感じやカラーで差別化する回答が多かったと思います。

帽子は何百年、何千年も前からある服飾です。すでに様々なパターンがあり、多くの人にとっては生活必需品ってほどでもないので、何にこだわってみるのか自由に考えられます。スマホより自由度が高いのではないでしょうか。

製造業として働くことになっても、メーカーを選ぶ際は

・何を作っているのか

・何を作ろうとしているのか

・何に特徴があるのか

・価格帯

・ターゲット

・ボリューム

・種類

・何を実現したいのか

・その他(勤務場所や待遇など)

それぞれのメーカーで中身が異なるはずです。あなたが働くとしたら、どのようなメーカーだとワクワクしますか?

 

2つの質問をしてみましたが、帽子の方だけは値段や商品名まで考えてもらいました。

大きな会社で何かを作ると、話題にもなりやすいでしょうし、社会に与える影響も大きくなります。しかしながら、普通は大人数のプロジェクトで動きますから、あなたの意見は反映されにくいのも事実です。

小さい会社だと、デザインだけでなく何から何まで関わることになるでしょう。当然、値段や商品名を考えるだけでなく、販売する現場にも入ることになると思います。関わり方が広い分、あなたの思いを発揮しやすいとも言えます。

あなたはどっちのタイプですか?

ものづくりにチャレンジしたい生徒も一定数いると思いますが、上記のような目線で考えてインターンシップに行ったり、就職先を選ぶことで、あなたが力を発揮できる会社、力を発揮したい会社と出会う可能性は高まります。

後半は営業職について考えてみます。

アンケートの結果、営業職に就きたい学生はいなかったので、深いところまでは解説しませんが「どんな仕事をするにも営業力は必要である」ということは覚えておいてください。

例えば、何か芸術の分野で作り上げたとしても、それを世に広めるためには営業力が必要です。良い物を作れば知ってもらえる、買ってもらえる時代ではありません。

帽子の例で考えてもらったように、この帽子は何に価値があるのか、どう伝えるのか、ここまでセットで考えなければ良い商品も埋もれてしまいます。

それでは最後のアンケートです。

 

③あなたは無事に就職先が決まり、中古車を買うことになりました。

◆どういう営業担当者なら、信頼して話を聞いてみようと思いますか?

◇愛想がいい、快活である

◇説明がうまい、具体的でわかりやすい

◇質問に答えてくれる

◇親身になってくれる

◇きちんと聞いてくれる

◇質問してくれる

◇親切、丁寧

◇気さくに話せる

◇ゆっくり話してくれる

◇欲しいものを提案してくれる

◇正直に話す、デメリットも話す

◇楽しそうに話す

◇連絡できる

 

◆反対に、どういう営業担当者なら、避けたいなって思いますか?

◇愛想が悪い、態度が悪い

◇話を聞かない

◇しつこい

◇目を合わせない

◇あいまいな返答をする

◇抽象的な返答が多い

◇雑談が多い

◇返答がずれている、一方的に話す

◇声が大きい、威圧感がある

◇腰が低い

◇寡黙、暗い

◇催促する

◇メリットや実績だけをアピールする

◇余計な買い物をさせる

◇マニュアル通りに話す

◇大事なことを話さない

◇話が長い

 

おそらく中古車を買ったことがなくても、イメージできるのではないでしょうか。こういう営業担当者ならいいな、こういうのは嫌だな、という意見に対しては大差ないと思います。やっぱり人柄って重要ですね。

営業職で難しいのは

・あなたが望む営業スタイル

・お客さんが望む営業スタイル

・成果が出る営業スタイル

が一致しないことですね。あなたが「こういう営業スタイルはイヤなんだけどな…」と思いながらも、実際に売れてくると自信になって、売り方が定着するってことはよくある話です。

何事もそうですが、経験が浅いうちは「相手が望むようにやってみる」これに徹した方が、結果的に成果も出るし、ストレスを感じないと思います。コンプライアンスに反しない限り、素直に言われたようにやってみるのがオススメです。これは仕事はもちろん、デザインの勉強にも通ずるのではないでしょうか。

 

今回は製造業と営業職について、芸大の勉強との繋がりを考えてみました。なるべく製造業、特にデザインにフォーカスして解説しましたが、いかがでしょうか。何かをデザインするということは、その先にお客さんがいたり、環境によってはデザイン以外まで意識を広げて動く必要があります。

そして、良い物を作れば知ってもらえる、買ってもらえるって時代ではありませんので、学生のうちからどんどん情報発信をしてほしいですね。芸術やデザインの勉強をしながら、そうすれば知ってもらえるか、評価してもらえるか、チャレンジをしてもらいたいと思います。