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デザインの勉強って、サービス業・事務職で役に立つの?【文星芸大キャリアガイダンス2022年】

2022年度、文星芸術大学において2年生向けに行ったキャリアガイダンスの概要です。ここ数年、講師として関わってきましたが、私なりに「芸大に入ったら、当然そっちの方面に進まなきゃダメでしょ?」とか「芸大で勉強してるけど、これって本当に役に立つの?」という問いに対して、何かしらの回答になるものを伝えたいと考えています。

初回のテーマは「芸大の学びと実際の仕事の関係性①」ということで、特にサービス業・事務職との繋がりを解説しました。講座の下書きと実際に話した内容をミックスさせていますので、ラフな感じのテキストですが、参考にしてもらえると幸いです。

 

■自己紹介

・吉田稔

・青森県出身

・理学部数学科

・ファミレス13年

・経理事務1年

・キャリアコンサルタント10年

・マーケティング1年〜現在

現在勤めているマーケティングっていう仕事は、なかなか一言では表現できない仕事内容ですが「良い商品を、どのようにお客様に届けるのか考える」みたいな感じです。芸術もそうですが、メチャクチャ良いものを作ったからといって、それが勝手に世に知られて、売れたりするわけではありません。必ず「どのように知ってもらおう」とか「どうすればこの価値が伝わるか」という戦略を考える必要があります。40代半ばにして、こういった仕事をしたくて改めて勉強して、昨年転職をしました。

大学までは数学を勉強してきました。残念ながら、就職先であったファミレスではほとんど役に立ちませんでした。しかし現在は、数字を扱ったりデータを分析する仕事もありますので、やっと数学に慣れていて(別に得意なわけではない)助かった…となっています。

大学では学習塾でアルバイトをしていました。数十人の前で授業を行っていたわけですが、これもまた講師として学生の前で話す場面で役に立っています。20年以上前の数学の勉強と学習塾の経験が今になって活かされています。

何を伝えたいかというと、これは私に限ったことではなく、大学生活で経験している出来事、勉強、趣味、アルバイトでも何でもいいのですが、必ずいつかは役に立ってきます。だから勉強はもちろん、何事にもぜひ一所懸命取り組んでもらいたいです。

 

仕事に関する講座をするわけですが、ここで皆さんにLINEを使ったアンケートを行いたいと思います。当然個人情報は明かさないですし、指名もしないので本音で返信をしてください。順番に4つ送ります。

アンケートと回答は以下の通りです。回答に関しては、順不同ではありますが、なるべく元々のLINEテキストに沿って記載しています。

 

■「あなたにとって仕事ってどういうイメージですか?」

・お金を稼ぐ

・大変そう、時間が長い、給料が高い

・人生の新たな一歩

・大変

・生活を安定させるもの

・事務職か営業職のイメージ

・人生の大半を費やすもの

・お金を稼ぐ、生活の質を上げる、スキルアップ

・お金をもらって働く

・大変

・大変、生きるために必要、働く場所が重要

・お金を稼ぐ方法、社会的義務

・生活のために仕方なく行う

・お金を得るためのシステム

・人生の大部分、生きるための最低条件

・好きなことでも仕事にすると嫌になってしまう

・お金を稼ぐために死ぬ気で行う

・堅いイメージ、決められた枠

・上司に怒られる、給料が上がらない、希望を抱けない

・お金を稼ぐ、生きるため

・お金を稼ぐ、生きがい、人生の目標

・生きるため

・責任、稼ぐ

・生きがい、瑞々しく生きる手段

これから仕事についてたくさん考えるにあたって、自分のなかで整理してもらいたくて質問しました。ポジティブな見方、ネガティブな見方、いろいろありますが、もちろん何が正解というのはありません。

大切なのは、「時間」「お金」「生活」に関する回答が多い傾向ですが、それくらい、仕事とこの3つの要素は密接な関係があるということです。ざっくりですが、仕事がうまくいくことと、人生を楽しむことは、ほぼイコールですね。

 

■「あなたにとって就活成功って何ですか?」

・職場の雰囲気や仕事内容、周りの人達の人柄が自分に合っている

・無事に就職できること

・納得できる会社に就職する

・周りの人が優しい、休みが取りやすい、差別がない

・希望する職場環境

・志望した会社に就職する

・生きるうえで必要なこと

・内定を受ける

・絵を仕事にできる

・苦労する

・長年安定した仕事ができる

・需要と供給

・ブラック企業に入らない、安定した収入、人間関係がいい

・就職できる、職場環境が良い

・良い職場に出会える

・自分の意思で仕事を続けられる、生活が良いものにできる

・やりがいがある、人間関係が良い

・なりたい職業とそこで安定して働ける環境

・無理なく働ける

・働きやすい環境

・一番やりたい仕事に就く

・前提条件のクリア

・自分に合った環境、報告できる会社

・希望する場所で働ける

・希望通りの職に就ける

・働きやすい環境、自分の能力を活かせる

・楽しいこと、稼ぐに繋がる

・理想の会社に就職する、準備したことを出し切る

・安心して働ける

このアンケートで知ってもらいたいことは、就職成功はみんなバラバラ、ということです。仕事に対するイメージがバラバラ、就職成功もバラバラ、ですから誰かに押し付けられても納得できるはずがありません。1人1人が自分で考えて行動しなければならないわけです。こういったキャリアに関する講座を行っていますが、考えるためのヒントを提供しているに過ぎません。大学側で行っている適性診断など、自分をよく知るための講座も同じことです。

まずは「自分を知る」それから「自分で考える」そして「自分で動く」この順序を意識すれば良いと思います。

■「就活で成功するために必要なことって何だと思いますか?」

・会社についてよく調べる

・コミュニケーション能力、プレゼン能力、行動力

・実績

・努力、諦めない

・勉強

・誰にも負けない強み

・準備、下調べ

・好きな仕事に出会えること

・ポートフォリオ

・時間をかけた事前準備

・企業を調べて早めに動く

・長年安定した仕事ができる

・調べる

・知識、経験、才能、運

・情報を集める

・見学に行く、スキルアップ

・事前準備、コミュニケーション能力

・面接の上手さ、準備、好印象を与える経験談

・実力をつける、その実力を引き出せる

・精神力、忍耐力

・人間性

・下調べ、自分に合う会社、意見を集める

・自己分析、下調べ

・やる気、元気、力、視覚、経験

・良い人間関係の構築

・様々な経験を自分の言葉で伝えられる、積極性、話を聞く

・準備、下調べ、行動力

・知識、企業研究、経験

・調べる、面接練習

・色々なことを経験、やりたいことを継続する

・準備

・企業研究

この質問は「就活成功のために何をするの?」という内容ですが、端的に表現すると「そう思っているならやりましょう!」ということです。私から伝えたいことは、何を準備するにしても、時間が重要なポイントです。

「あなたが行きたい会社は、みんなも行きたい会社」

ということは、あなたもみんなも「いいなぁ」と思っている会社からどんどん採用枠が埋まっていき、どんどん選択肢が減っていくということです。最終的に1つに絞ることが必要ですが、そもそも選択肢が少ない状況で選ぶということは、後悔が残る可能性が高いです。

「早く動く」

を2年生のうちから意識しましょう。

 

■「あなたはどういう仕事をしたいと考えていますか?」

・絵関係

・イラストレーター

・人に夢を与える、自分を活かせる

・絵を描く仕事

・趣味を優先できる

・写真やパッケージのデザイン

・フリーランス

・漫画家

・漫画家、編集者

・漫画家、イラストレーター

・学生生活で得たことを活かせる

・映像関係

・児童向けゲーム、冊子の制作、ファッション業界、PCを活かせる

・作品を作る、美術に関係する仕事

・人と関わり合う

・得意を活かせる、できる仕事、性格に合っている仕事

・自分を表現できる、創作活動

・絵画関係

・アニメーター

・WEBデザイナー

・映像関係

・目立たない仕事、裏方

・自分の作品が認知される

・画家、副業ができる

・漫画家

・ゲーム関係

・イラストレーター、デザイナー

・自分のやりたいこと

・人を笑顔にできる仕事

・工場、第一次産業

どういう仕事をしたいですか?ということに関しては、さすが芸大生なので、芸術関係やデザイン関係の回答が多いですね。その意欲で勉強を続けてもらいたいと思います。その一方で、芸術関係やデザイン関係に就職する割合は、2~3割くらいに収まるのも現実です。

その要因は何点かあると思いますが

・求人数が多くない

・デザインに絞って生きていく自信がない

・他にやりたい仕事が見つかった

あたりが多いと察しています。そうなった場合に「芸大で勉強した内容って無駄になるの?」となるかもしれませんが、冒頭に話したように決して無駄にはなりません。

どういった仕事に就いても、デザインをまったく考えない!という職場の方が少ないのではないでしょうか。デザインの勉強がどのように活きるのか、具体的に考えてもらうために、履歴書と職務経歴書について解説したいと思います。

 

■履歴書

今回のテーマは、サービス業・事務職です。履歴書と職務経歴書についてカンタンにまとめたいと思います。就職や転職の場面で必要になりますので、ポイントを押さえておいてください。

履歴書は、氏名、住所、連絡先、学歴、職歴を書いたものです。フォーマットが決まっていて、文章ではなく単語中心で書くので、スマホで入力できるツールがあったりするくらいです。

履歴書は、一言で表現すると「あなたは誰ですか?」という質問に答える書類です。ですので、事実に基づいて正確に書くことが重要です。事実を書いているだけなので、極端な話、誰が作成してもほとんど変わりません。イメージとしては、本の目次を作る感じでしょうか…詳しい中身はよくわからなくても、読む方は何について書かれた本なのか察することはできます。

中途採用の場合には、企業の目線で考えてみると、もっとも知りたい情報は、名前住所よりも、学歴よりも、職歴の中身です。職歴に書く内容は入社年月や退職年月くらいなので「その在籍していた数年は、実際のところどうだったんですか?」が本当に知りたいところです。それをプレゼンするのが職務経歴書です。

 

■職務経歴書

職務経歴書はあなたのプレゼン資料です。これは誰が作っても同じにはなりません。あなたの仕事上の強みをしっかり伝えるための書類なので、創意工夫が必要です。さっきのマーケティングの話に通じますが「私は事務職を頑張ってきました!」という職務経歴書では、他にもいっぱい似たような人がいるし、あなたの強みは埋もれてしまいます。

職務経歴書は「あなたはそこで、どういう仕事をしてきたんですか?」という質問に答える書類です。ですので、一番強みとなるポイントが引き立つように、読む人があなたが活躍しているシーンを想像できるように作成します。書式もフリーなので、伝わるように作成すればOKですが、あまりに斬新だと読む方も合わせるのが大変なので、フォーマットはある程度揃えながら、中身を工夫します。

 

■サービス業

サービス業とは、何かモノを販売したり、食事を出したり、宿泊や介護のような大きな体験を含むものまで様々あります。他の仕事との違い、特徴は「お客さんが近い」これに尽きるでしょう。目の前のお客さんに「ありがとう」と礼を言われたり「楽しかったです」と感謝されたりするのは、サービス業ならではです。

誰かのために頑張ることがモチベーションになる、というタイプであれば完全に向いている仕事と言えるでしょう。

そのサービス業ですが、現場レベルで

・新しいサービスのポスターを作ろう

・目立つようにPOPを作ろう

・説明しやすいように、イラストも使おう

みたいな流れで、何かを作る場面は非常に多いはずです。

「誰に見せたいのか」そして「一番何を伝えたいのか」を考えて、カタチにするために、デザインを勉強していることはかなり役に立つはずです。もちろん仕事の進め方として注意は必要です。専門的な知識を全開にして、店長の言っていることをひっくり返すようなことをすると、あなたの言うことも聞いてくれなくなりますので、みんなの意見を聞きながらまとめ上げるスキルも必要です。

業務としてデザインするっていうよりも、あなた自身も楽しんで工夫してみる、そのような姿勢で取り組むことができれば、より良いものができるでしょう。結果的に、あなたに対する評価も上がり、表現したいことが表現できるように近づくと思います。

 

■事務職

事務職は意外とサービス業と通ずる部分があり、一緒に働く同僚のために事務処理をしたり、何か書類を作るイメージです。相手がお客さんなのか、同僚なのか、という違いと理解していればいいでしょう。

事務職の場合は、何かを作るにも形式が決まっていて、それに従って入力する仕事も多いのですが、社内で新しいことを共有するために

・難しいマニュアルを簡単にかみ砕く

・変更事項を抜粋してまとめる

・目立つように注意書きを作る

といった業務も発生します。ですので、淡々と書類を作っても仕事としては充分ではありますが、ぜひ「どうやって作ったら、もっと伝わるだろうか」という目線で取り組んでもらいたいです。サービス業と一緒であなた自身の成長のため工夫して作る、という視点を持つことで、成長度合いが大きく変わります。

サンプルも含めて、サービス業と事務職について考えてもらいましたが、どちらもパソコンを使って何かを作る業務が多いことは一緒です。

サービス業はお客さんのためが多く、事務職は同僚のためが多い、という違いはありますが、人に喜んでもらえるポジションなので、非常にやりがいはあると思います。

今後の進路を検討する際に、サービス業を選択肢に入れたり、サービス業について一歩考えてみるのであれば、参考にしてもらえると幸いです。