あなたのキャリア、8割は偶然で決まっている⁉︎ というキャリア理論をご存知でしょうか。
キャリアコンサルタント試験では必ず覚えておかなければならない、ジョン・D・クランボルツ教授(スタンフォード大学)が提唱した理論です。20世紀末に提唱された理論なので、キャリア形成の考え方としてはかなり新しい部類に入ります。あなたも実感しやすいのではないでしょうか。
栃木県のキャリアコンサルタント、吉田です。
今回の記事では『計画された偶発性』について解説します。
要点は以下の2つです。
①個人のキャリアの8割は、予想しなかった偶発的な出来事によって決まる
②その偶発的な出来事を、計画的に導くことでキャリアアップしていくべき
例えば、
・あるセミナーでは「自分のキャリア形成をどうするのか考えてみましょう」
・ある学校では「どこに進学するか、どこに就職するか、それからのことも考えましょう」
そんなこといきなり言われて、自分のキャリアがどのように続いていくのかイメージするのは、とても難しいですね。クランボルツの『計画された偶発性』は、自分自身が理想的なキャリアイメージを描いても、その通りにはならないことを前提にしています。
かなりざっくり言うと「まぐれによって人生は決まるから、いつまぐれが起きてもいいようにしましょう」ということです。この準備しておくスタンスがとても大切です。
それぞれについて具体的に考えてみます。
①個人のキャリアの8割は、予想しなかった偶発的な出来事によって決まる
クランボルツはキャリアに関して、様々なアプローチをしています。その基本的な理論は次の4つにまとめられます。
・先天的資質(遺伝的要素と特殊能力)
・環境条件やそこでの出来事
・学習経験
・課題に対するアプローチ
学校生活の方がピンとくるかもしれません。デタラメに書いてみた読書感想文がとても褒められて「自分はひょっとしたら感想文を書くのが得意なんじゃないかな?」と良い意味で調子に乗ったとします。するとその後も、読書感想文に対してプラスのイメージを持ち、さらに良いものを書こうとするでしょう。仕事においても「人見知りだと思っていたけど、まったく新しい客に対しては意外と緊張しなかった」のような現象が起きます。
このように環境に働きかけて生じる学習は「道具的学習」と呼ばれます。
読書感想文が褒められたことで、みんなの前で発表する場面があったとします。すると今後は、みんなに聞いてもらう前提の読書感想文です。最初こそデタラメでしたが、自分の書いたものを発表することで「みんなの前で話すような仕事っていいかも…」と感じるかもしれません。
人見知りだと思っていたけど、意外と接客するのが楽しいと実感したら「いろんな人に会えるような法人営業も面白いかも…」とキャリアの方向性が変わるかもしれません。
このように環境に働きかけて、そこから得る刺激に対してさらに生じる学習は「連合的学習」と呼ばれます。
クランボルツは以下のように述べています。
「我々のキャリアはそれぞれ予期せぬ出来事によって決定される。そして、我々が人生で遭遇するその予期せぬ出来事を上手に活用することによって、単なる偶発的な出来事も自分のキャリア形成の力に変えることができる」
この言葉に集約されます。
②その偶発的な出来事を、計画的に導くことでキャリアアップしていくべき
クランボルツは、キャリア形成について以下のようにまとめています。
A 人は生涯学習し続けるものであり、キャリアはこうした生涯にわたる学習によって形成される
B キャリアの最終ゴールは豊かな楽しみのある人生、生活を築くことである
C 予期せぬ出来事はむしろ意図的に起こすこと
D キャリアの選択肢はいつでもオープンにしておくこと
E 予期せぬ出来事を探索するために行動を起こすこと
F 失敗も学習のひとつであり、そこから学ぶことも多い
G スキルは学習できるものであるという前提で仕事を選択すること
H 引退はまた同時に、別の形で他人のための支援を行うスタートでもある
今回の記事では、C〜D〜Eに注目しています。この一連の流れが非常に重要です。
キャリア形成は、綿密に計画して実現できるものではありません。むしろ偶発的にいつかやってくるアクシデントのようなものです。このプラスのアクシデントを絶好のチャンスにするために心の準備をしてことが必要です。
どんな心の準備が必要なのか?については5つのキーワードで紹介します。
・好奇心
・持続性
・楽観性
・柔軟性
・冒険心
これらを意識して日々行動すれば、必ずアクシデントは起きます。
そのアクシデントの影響を受けて、あなたのキャリアの8割が決まっていきます。積極的にアクシデントを起こして、積極的にそのアクシデントを活用することで自分の成長に繋げましょう。