現在キャリアコンサルタントとして仕事をしていますが、以前は13年以上飲食業界でした。「キツイ」「タイヘン」と言われることの多いチェーンレストラン、ファミレスですが、決して避けた方がいいという業界ではありません。
飲食業界で得られる経験はどのような環境にあっても活かされます。もしあなたが男性(あまり性別で区切るのは適切ではありませんが、単純化するために表現しています)で転職を検討しているようであれば、ぜひ参考にしてもらえるとうれしいです。
栃木県のキャリアコンサルタント、吉田です。
転職相談を行っているときに、サービス業、特に飲食業界への転職を提案すると結構びっくりされますね。そもそも転職先を考えるときに選択肢に入っていないらしいです。
どうしてもマイナスイメージが広がっていると感じますね。
・営業時間が長い
・しかも休憩も取りにくい
・バタバタと忙しいので体力的にタイヘン
・その結果、募集しても集まらない
・パートやアルバイト中心で運営しており、責任が重い
・さらに店舗異動などがある
・理不尽なクレーム対応など精神的にもタイヘン
全部ウソです、とまでは言いませんが慢性的にこのような状況になっている職場の方が珍しいのではないでしょうか。または店長自身に問題があり、採用しても辞める、結果的に自分が働かなければならない、ますますイライラする、また誰か辞める、の悪循環を繰り返すパターンはありますね。
私自身もこの悪循環は経験があります。後述しますが、それらも含めて全部の結果が自分に返ってきて、自分が成長できるのは良い環境だと思います。
私がファミレスへの転職を提案する理由は3つです。
この3つに関心があればファミレスに向いているとも言えます。
①経営的な数字に触れる機会が増える
②組織を使って物事を動かす能力が上がる
➂セルフコントロールの能力が上がる
この3つですが、先の飲食業界に対するマイナスイメージとはまったく関係がないところがミソです。ひとつずつ解説します。
①経営的な数字に触れる機会が増える
毎月の売上予算、利益予算が決まっています。
売上を上げるためには、客数を伸ばすか客単価を上げるしかありません。客数が落ちていれば何かの原因でお客様の足が遠のいているのでしょうし、客単価が下がっていればおまりお金をかけたくないお店になっていると考えられます。つまり、数字が悪いと必ず原因があるので改善しなければなりません。また、数字が良いときもなぜ良いのか、そこがあなたのお店の強みになるので大切にしなければなりませんね。
経費に関しては、いろいろ管理する項目があります。もっとも影響の大きい人件費を適正にしないと無駄があったり、少なすぎてお客様に迷惑をかける場面が増えるでしょう。水道光熱費も同様です。備品消耗品費もお店で必要量を発注するので適正な在庫にすることが大切です。こういう細かい数字に目が届く男性社員は経営的な見方をいち早くマスターできると思いますね。
あとは食材費、原価です。食材を使うことなく賞味期限切れにすることは避けなければなりません。フレッシュローテーションという呼び方をしますが、発注して納品して調理して提供する、このサイクルをいかに縮められるかが店長の腕の見せ所です。また、料理に使う分量が守られていないと原価率は簡単に上がったり下がったりします。つまりレシピマニュアルの通りにお客様に提供しないと、利益を左右してしまいます。
このように売上と経費のほとんどを店長が管理することになりますが
「利益」=「売上」−「経費」
この単純な式を自分のこととして関われるのは、飲食業界の大きな魅力です。
アタマで理解することはいくらでもできますが、お客様の顔と繋げて分析したりパート・アルバイトの作業が改善することで数字が変わることを実感できます。ちょっとした経営感覚ですね。自分のため、お客様のため、部下のため、会社のためという発想を自然とできるようになります。
②組織を使って物事を動かす能力が上がる
年齢に関係なくある程度早い段階でマネジメントを任せてもらえることは、飲食業界ならではでしょう。特にファミレスは、パート・アルバイト比率が高いことで「必要な時間帯に必要な人員を揃える」ことを実現しています。店長になると仕事の範囲が多岐にわたり、とても自分ひとりの力ではお店を運営できなくなります。
時間帯ごとにパートリーダーを配置して、お客様やその他従業員の管理をお願いすることになります。新メニュー導入や新人育成など重要な仕事も依頼することになります。間接的にお店全体のレベルを上げる能力をマスターできることも大きな経験です。
最初は誰でもうまくいきません。
なかなか信頼関係が築けなかったり、パートリーダーとして育成している途中で辞めてしまったり、従業員どうしでイザコザがあったり、まずスムーズには進みません。しかし真正面から向き合って「どうやって今いる戦力を最大化しよう?」という考え方が自然とできるようになります。
性別、年齢、それまでのキャリア、それぞれのキャラクターや強み、当然みんなバラバラですがここまでバラバラな組織をまとめる練習ができる機会はありがたいと思えます。練習という言い方は適切ではないかもしれませんが、結局自分が鍛えられるという意味です。
自分よりも料理が上手なパートの女性、自分よりも笑顔が素敵な女性だらけの職場です。そうなるように採用しているはずです。この方々を動かすことができたらヒューマスキル、ビジネススキルともに磨かれていること間違いなしです。
➂セルフコントロールの能力が上がる
これは他の業界に転職して一番実感したことかもしれません。
お店にいると、ましてや店長になるといつも誰かと仕事をしています。ファストフードなどでは店長によるワンオペなど社会問題になりましたが、ファミレスの場合はだいたいの勤務時間を従業員と過ごしますし、目の前にはお客様がいます。
どんなに機嫌が悪くても、それなりに声をかけてもらいやすい雰囲気を出さなければならないし、どんなに忙しくても、ある程度は冷静を装って動かなければなりません。
「我慢する」という感覚とは違います。
「優先順位を考えるようになる」という意味です。
・今ここで感情的に叱ることはプラスなのだろうか?
・自分は、従業員がカリカリしているようなお店にしたいんだっけ?
・思ったよりかなり忙しいけど、ゆっくり食事を楽しんでもらいたい!
そのときに自分がどう振る舞うことが全体にとってプラスになるのか考えるようになります。ここがうまくできていると必ず、食事中のお客様から
「このお店って従業員募集していますか?」
と聞かれます。こうなったら自信が持てますね。
1人になる時間が少なくて、それはそれで気持ち的に困ることもあるでしょうが間違いなくプラスの影響が大きいです。どの業界に転職することになっても、自分を律することができる人は信頼を得やすいと思います。
キャリアコンサルタントの視点でファミレスへの転職メリットを紹介しました。
参考にしてもらえると幸いです。